Web論

ニコニコ映画祭のノミネート作品を一通り見てみた。
ニコニコ動画(RC2)‐タグ検索 ノミネート作品

できばえはともかく、こういう、「大人のごっこ遊び」が発散、発表、共有できる場が生まれたというのは非常に有意義…かどうかは分からないが、ある種文化的で面白い現象だと思う。とりあえず僕はとても嬉しい。
(しかしこの「映画祭」という企画自体は失敗している。理由は後述する。)

5年ほど前は、特に機材や技術のない人間が、「インターネットで何か面白いことをやろう」と思ったら、とりあえず文章を書くしかなかった。まともな動画が撮れるムービーカメラは数万、数十万もしたし、たとえ機材や技術があっても、動画や音楽をダウンロードできるようなネット環境は誰も持っていなかった。これが日記系、“テキストサイトブーム”を支えた要因である。かつて、日本のプロスポーツが野球だけだったとき、身体能力の高い人は野球を頂点として集まったように、「おもしろい人」「発信したい人」はテキストサイト(~ブログ)に集まった。

しかしYoutube以降、素人芸人や素人ミュージシャンが、その趣味の成果を文章以外で気軽に発信できるようになったのだった。国内においては、ニコニコ動画以降と言ってしまってもいいかも知れない。Youtubeは、日本では(運営元が期待したほどには―Upload Yourself―)自作のホームビデオを上げる人は少なく、ほとんどがテレビ番組、DVDなどの著作権抵触コンテンツの視聴サイトとして使われてしまった。

ニコニコ動画のブレイクスルーは、やはり国内サービスという点と、あの独特のコメント機能だろう。動画に直接ベタベタと貼り込むことのできる視聴者コメントは、ともすれば作品自体をスポイルしてしまうリスクもあるが、絶妙の双方向性と参加感覚をもたらした。
(これは、テキストサイト時代の「日記+BBS+2chスレッド」の機能が、数倍にも増幅されたようなものだろうか。)

となると、先日行なわれた『ニコニコ映画祭』は、審査員が限られた数名によって「勝手に」行なわれてると言う時点で、すでにニコニコ動画のサービスの強みを捨ててしまっているわけで、失敗することも必然だったのだ。

(櫻木)