コラム

東大生は確かに勉強ができるかもしれないが、「勉強のできない子」のがどうしてできないのか理解できないので、家庭教師には向いていない、という指摘を読みました。

「東大生を家庭教師にしないでください。」というと、「どうしてですか?頭がいいから教え方もうまいんでしょう?」といわれます。確かにそうです。東大生は頭がいい。自分が言うのもなんですが、他の大学の学生に比べ東大の学生は真面目な奴が多いです。けれども頭がいいから教え方もいいというわけではない。よく考えてみてください。

東大生の大半は、「勉強が出来ない」「勉強が苦手だ」という経験がありません。生徒が「ボク、三人称単数がわからないんだ。」といっても、「どうしてそんなこともわからないの?heとかsheとかTomとかの三人称のときは一般動詞を三人称単数形にすりゃいいだけじゃん」とか思うだけ*1なのです。「どうしてそんなこともわからないのか」となってしまい、「相手がどうしてわからないのかわからない」のです。

生徒のわからないという思いを共有できません。そんなんでは、個別指導も塾講師もできません。
東大生を家庭教師にしないでください – Thirのはてな日記

この件についてはちょっと僕も思うところ、いや思い出があります。というのも僕が東大生だったから……ではなく、ずっと東大生の個別指導塾に通っていたからです。その塾は、「講師全員東大生」というのを売りにしている東大ブランド塾で、色んな東大生がいました。

この個別指導塾は、生徒が持ち込むか、センセイが与えるかした課題を、30分~1時間かけて席で解き、終わったら(もしくは分からなかったら)センセイのいる部屋で指導を受ける、というシステム。

中でも僕が最も困ったセンセイは、恐らく文系なのでしょう、数学の苦手なセンセイ。中学数学でもちょっと難解なところになると、このセンセイは詰まってしまうんですね。

時には、「ちょっと待って…。」と問題文を凝視したまま、10分、20分と固まっている。別に問題集なんだから、関に戻れば解答があるし、解答を見てからそれを噛み砕いて教えてくれればいいものを、このセンセイは「東大生としてのプライド」が邪魔するんだかなんだか、とにかくひたすら塾講してる。もとい、熟考してる。

いつもこんな調子だから、時間がかかりすぎて生徒がぜんぜん裁けず、このセンセイのときは拘束時間が通常の2時間から5時間くらいに増えたりもするので本当に嫌でした。

人に物を教えるのも、逆に教えられるのも、センスだよなあ、とも思いますけど、分からないことは「分からない」と、教える方も教わる方も素直に言えることが最も大事なのだと思います。
人を教えるプロセスこそが、自分にとっても一番勉強になることなのですから。

(櫻木)