時事問題

幸福の科学の組織する政党、幸福実現党の動きが活発になってきている。
幸福の科学の主張は、「超保守的」とも評されるくらいで、自民党の保守派議員の応援もかなりしているそうだ。
選挙活動の中で配っているチラシを見てみても、例えば

  • 北朝鮮の核ミサイルに断固として対応する
  • 憲法改正し、日本も核武装、敵基地攻撃能力を保有する
  • 景気回復。日経株価2万円を目指す。
  • 消費税の増税はしない

などと素晴らしそうな主張が並び、一見すると『総理・桜木朱雀』のマニフェストか?と見まごうばかりである。
北朝鮮に対する姿勢だけをとってみても、在日参政権を保証している創価学会の政党よりはマシかもしれないという気はする。

党首のアフロディーテ(大川隆法総裁の妻)の主張も

北朝鮮核問題に「自分の能力を超えている」と言った麻生首相は辞任すべき。
北朝鮮に友愛などと言っていたら、日本は北朝鮮の植民地。
中国が常任理事の国連が何とかしてくれると言っている政治家は馬鹿。

3年以内に北朝鮮は核攻撃が可能になる。南下したら韓国は火の海。

憲法を改正し自衛隊の装備を改良すれば十分対応は可能である。

もし私が首相となり、もし北朝鮮が日本に向け核兵器を打つ意志が明確になったならば、
敵地先制攻撃で北朝鮮のミサイル基地を爆撃します。
【ネトサヨ発狂】幸福実現党「憲法9条を改正して北朝鮮のミサイルから日本を守ります」

と保守派というよりタカ派の様相を呈しており、僕なんどは思わず喝采を送ってしまいそうになる。だが待ってほしい。一発だけなら誤爆かも知れない。…じゃなくて、幸福実現党を「保守」とするには、『国体護持』の1点において強い疑念が残る。

幸福実現党は、憲法改正ではなく、新憲法の試案を公開している。
このこと自体は否定しない。今の「日本国憲法」が、国際法違反(戦勝国といえど、占領地に恒久法を制定してはいけない。ハーグ陸戦規定による)の「占領基本法」であり、条文だけちまちまと改正してもしょうがないシロモノだからだ。

新・日本国憲法の中身

しかし、幸福実現党の新・日本国憲法はそれいじょうにとんでもないシロモノである。

新・日本国憲法

幸福実現党創立者
大川隆法試案

前文
われら日本国国民は、神仏の心を心とし、日本と地球すべての平和と発展・繁栄を目指し、神の子、仏の子としての本質を人間の尊厳の根拠と定め、ここに新・日本国憲法を制定する。
第一条
国民は、和を以もって尊しとなし、争うことなきを旨とせよ。また、世界平和実現のため、積極的にその建設に努力せよ。
第二条
信教の自由は、何人に対してもこれを保障する。
第三条
行政は、国民投票による大統領制により執行される。大統領の選出法及び任期は、法律によってこれを定める。
第四条
大統領は国家の元首であり、国家防衛の最高責任者でもある。大統領は大臣を任免できる。
第五条
国民の生命・安全・財産を護るため、陸軍・海軍・空軍よりなる防衛軍を組織する。また、国内の治安は警察がこれにあたる。
第六条
大統領令以外の法律は、国民によって選ばれた国会議員によって構成される国会が制定する。国会の定員及び任期、構成は、法律に委ねられる。
第七条
大統領令と国会による法律が矛盾した場合は、最高裁長官がこれを仲介する。二週間以内に結論が出ない場合は、大統領令が優先する。
第八条
裁判所は三審制により成立するが、最高裁長官は、法律の専門知識を有する者の中から、徳望のある者を国民が選出する。
第九条
公務員は能力に応じて登用し、実績に応じてその報酬を定める。公務員は、国家を支える使命を有し、国民への奉仕をその旨とする。
第十条
国民には機会の平等と、法律に反しない範囲でのあらゆる自由を保障する。
第十一条
国家は常に、小さな政府、安い税金を目指し、国民の政治参加の自由を保障しなくてはならない。
第十二条
マスコミはその権力を濫用してはならず、常に良心と国民に対して、責任を負う。
第十三条
地方自治は尊重するが、国家への責務を忘れてはならない。
第十四条
天皇制その他の文化的伝統は尊重する。しかし、その権能、及び内容は、行政、立法、司法の三権の独立をそこなわない範囲で、法律でこれを定める。
第十五条
本憲法により、旧憲法を廃止する。本憲法は大統領の同意のもと、国会の総議員の過半数以上の提案を経て、国民投票で改正される。
第十六条
本憲法に規定なきことは、大統領令もしくは、国会による法律により定められる。
幸福実現党の新・日本国憲法

日本の元首は大統領?

現行の占領憲法においてすら第一条に登場する天皇条項が、幸福実現憲法では第14条に要約登場し、しかも
第十四条
天皇制その他の文化的伝統は尊重する。しかし、その権能、及び内容は、行政、立法、司法の三権の独立をそこなわない範囲で、法律でこれを定める。

とされている。「天皇制」という左翼的な述語には引っかかるが、実際現在の天皇の「権能、及び内容」は、政治・司法から離れたところにあるのは確かだ。

しかしこの憲法案はそれだけにとどまらない。現在、天皇は世界の暗黙の了解として元首として扱われているが、この憲法試案では第3条、第4条で「国家元首」たる「大統領」が大統領令を発令して行政を執行するとなっている。

これはヤバい。大川総裁の「よげんのしょ」では、自身が「せかいだいとうりょう」になるところまで絵が描かれているのかどうか。それは分からない。しかしこの憲法の内容では、「天皇制」を単なる「伝統文化」にまで矮小化させ、おそらく大統領令によってさらにそれを左右できるようにしてある。

天皇は単なる伝統文化ではない

憲法は、まず「国体護持」を第一に考えるべきである。
日本の国体は「天皇制」であり、それを失ったときには日本は日本でなくなる。

「別に普段の生活で天皇なんて関係ないし?」
と思っている人も多いだろうが、それは違う。神代の時代から「祭祀王」として国家の安寧を願ってきた天皇の祈りが、日本を日本たらしめてきた。

年初には初詣をし、仏壇に手を合わせ、四季を楽しみ、米を食べる。日本語を話し、美しいもの、可愛いものを愛でる。こうした日本の日常生活の様式や心の動き自体が、「日本教」とでも言うべき民族の宗教的行動であり、その中心にあるのがいわば「機関」としての天皇なのである。
せかいだいとうりょうが天皇を否定したとき、日本は日本でなくなる。

(櫻木)