コラム

『硫黄島からの手紙』を観て来た。この感想についてはちょっと項を改めて書くとしたい。映画はともかくとして、席がハズレだった。

映画館で映画を見るときには、その映画自体の面白さ、音響設備等の質、席の良し悪し、以外に、周りの観客の態度が非常に大きな要因として、その映画体験に影響してしまう。

要するに、「周囲にうるさい人間がいたら台無し」なんである。

今回は、映画の題材から割と年配者も多かったので、パカパカ携帯をいじったり、ガサガサお菓子のビニル袋を物色したりしなさそうな初老の夫婦の隣に座った。

そしたら、この夫婦、実にうるさい。

どうでもいいところで「おぉ?」とかつぶやいて身を乗り出したり、笑うべき場面じゃないところで「フン」とか鼻で笑ったり、かと思えば重要シーンでゴニョゴニョ話している。さすがにここまで来ると看過できないので、「静かにしてください!」と注意してしまった。
しかもその後彼らは、映画のラストシーンで、タイトルや冒頭のシーンの伏線と連なる決定的なラストシーンでやおらガサガサと席を立ち、余韻まで台無しにしてくれた。

おかげで、二宮が泣くシーンで、栗林中将とどんなやりとりがあったのか、全く聞こえなかった。あーあ。うるさい客も嫌だけど、本当はそれを注意したりするのも嫌なのだ。それによって、その映画に対し「この映画を見たとき、うるさいのがいて注意したなあ」という不要な印象が付加されてしまう。

全く、喋りたいなら家でビデオでも見てればいいではないか。いい年して、僕のような若僧に映画館で叱責されて恥ずかしくないのだろうか。恥ずかしくないのだろう。彼らは、僕に注意されたことに対して、恥じ入るでも怒るでもなく、ただ純粋に驚いていた。自分達の行為が周囲にどんな影響を与えているか、彼らにはその想像力が全く欠如していたのだ。そんなきょとん顔。

こうして、コンサートと同じく僕は家でDVD見るよ派にシフトしていくのだった。それか公開終了間際のレイトショーで見るのが一番いいのかな。

(櫻木)