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哀れなり、亀田大毅。

試合前に、Yahooが作った煽りページがある。その中に、兄・興毅(頭ハンバーグ)が、浪速の内弁慶こと弟・大毅について語るインタビューがあるのだが、これが今見てみると非情に痛々しいというかある種興味深いというか、何ともいえない気分になる。

■大毅が一番練習した

大毅はオレら兄弟の中でも一番ボクシングが下手やった。
オレと和毅が才能があるとは言わんけど、大毅には才能がなかった。
その大毅がおやじとの努力でここまで来た。
ちっちゃいときからいっつも一緒に練習してきたけど、大毅が一番練習した。
ホンマに血がにじみ出るような練習をしてきた。

大毅はちっちゃいときからボクシングが嫌いやった。
オレらについてこられへんかったからな。
兄貴やからええとしても、弟の和毅ができることを、自分にはできへんっていうのが屈辱やったと思う。
大毅はそんなことは絶対に口にせえへんかったけど、つらかったと思う。
そやからボクシングが好きちゃうかったと思う。

■おやじも必死やったと思う

大毅が絵を描くようになったんも、オレらにできへんことをやりたかったんやと思う。
最初は絵も下手やった。
でもオレがうまいって言うまで何回も描き直すねん。
練習の合間にずっと画用紙に向かってた。
それでいつの間にかめっちゃうまくなってた。

おやじはいつも大毅につらくあたってた。
オレと和毅の練習が終わってもずっと大毅に付きっきりやった。
おやじが教えたことができへんかったら大毅はどつかれてた。

たぶんおやじも必死やったと思う。
3兄弟の中で1人でも脱落者を出したくなかったんやと思う。
大毅がオレと和毅と同じレベルに来るまで毎日毎日一生懸命教えてた。
おやじは一切妥協せえへんし、あきらめることもせえへん。
その厳しいおやじの練習に大毅はよう耐えた。
普通のボクサーやったらとっくに逃げ出してるで。

■世界チャンピオンになることを確信してる

兄弟の中で一番デキが悪かった大毅が今、世界チャンピオンになろうとしてる。
練習はウソをつかん。
ボクシングの神様もちゃんと見てくれてるはずや。
才能がなかっても努力すれば世界チャンピオンになれる。
大毅が証明すれば、これからの若いボクサーたちの希望にもなるはずや。
オレは大毅が世界チャンピオンになることを確信してる。

Yahoo!スポーツ – 因縁の対決! 内藤大助vs.亀田大毅

この安っぽい「お涙頂戴」ストーリーのどこまでが本当かは分からないし、どんな努力をしたからといって悪事がカバーされるわけもないのだけど、一抹の哀れみを覚えずにはいられない。
おそらく、「一番才能がなく」「一番練習をし」「一番親父にどつかれた」のは事実なのだろう。そして、多分、「ボクシングが好きではない」という所も。

「親父が教えたことができなかったらどつかれて」まで練習をしても、教える親父は単なるチンピラの素人レーナー。努力の仕方も方向も間違っていたわけだ。好きでもない事を、間違った動機で、決して報われることのない無駄な努力で費やした少年時代…。子は親を選べないというが、違う場所に生まれていたら、今頃は大学生で仲間とバンドでもやっていたかもしれないね。

親父は性根の腐りきった唾棄すべき人格破綻者だし、兄も粗野な品性のまま固まってしまって更正の余地はないし、三男は長男と顔がそっくりで面白いしで、あの一家に寄せるべき期待も同情も皆無なのだけど、大毅だけはなんか…。ちょっと可哀想になってしまった。リング上で内藤に小声で「お前いい加減にしとけよ!」と一喝されて「はい…」と返事したというのも本当なんだろうなあ。この小物ぶりが哀れを誘う。判官びいきは日本人の美徳であると同時に、致命的欠陥でもある。

キン肉マンでこんなエピソードがあった。「完璧超人」としてキングに師事していたネプチューンマンが、なりふりかまわず反則技を繰り返すキングを見て幻滅し、思わずラリアートを繰り出す…。

「私たち完璧超人は、いかなるときも圧倒的な強さで正々堂々と闘うのではなかったのですか!」
「グフォフォ…。そんなもん、時と場合によるワイ」
ドガーッ!
「グオォ…!ネプチューンマン、貴様血迷ったか!」
「世の中!狂ってんだよ!狂ってんだよ!」
ネプチューンマンの形相は、もうフツウではなかった。
「ガッシ!ボカ!」
キャー、やめて!
「あっ……はい」

…今、手元にコミックスがないので詳細はうろ覚えだが、というか後半は明らかに鬼才・Yoshiが混ざっているが、とにかくこんな話だったと思う。
もし、まだ亀田劇場で儲けようと思ったら、大毅だけ改心して正義ボクサー(きれいな亀田)になり、親父に勘当されて別ジムに移籍、兄弟マッチで激突、というシナリオではないだろうか。

(櫻木)