Web論

かつて、現在のようにブログがブームを過ぎて一般化する前に、テキストサイトという「新時代の町人文化」がありました。(今も伝承されている、という見方もできますがここはあえて過去形です。)

かつてそのテキストサイトで有名なサイト(大手サイトと言われた)だった残鉄剣というサイトが、思い出したように更新していると聞いて(via 花魁発狂)見てきました。元甲子園投手のおじいちゃんが草野球をしているかのごとき更新を見て、なんとも言えない気分になりました。


ふと10年ぶりくらいに、2ちゃんねるのテキストサイトスレッドを探してみました。ブログがひとつの板を所有するまでになったのに、相変わらずテキストサイトはネットウォッチ板のスレッドのままで細々と存続していました。

そこでこんな文章に目が止まったのです。

352 :名無しさん@ゴーゴーゴーゴー!:2007/03/07(水) 22:18:28 ID:BY3wWKoK
4年ぶりくらいにテキスレ読んだ。悲しくなった。なんだよこの廃れ具合。
俺はお前たちの言う大手サイトの管理人だった男だ。
当時のサイトを目に留めてもらい、色んな文章の仕事を経て今はそこそこ有名な編プロで働いてる。
本物の文章のプロの中じゃ俺なんかぺーぺーで毎日辛いことばかりだ。
仕事で文章を書くのは苦しくて、そんな時、テキストサイトをやってた自分を思い出す。
ネタ帳を持ち歩いて、どんな小さなことでもメモして、ちょっとした言い回しでも
何かネタにならないかと頭を駆けめぐらせてた。
今と比較したら文章なんか下手すぎて読めたもんじゃない。
でも素人なりにアイデアと文章だけで、毎日本気で勝負してた。
他のサイトで面白いネタ出されると悔しかったし、負けたくないと思って必死だった。楽しかったよ。
それがなんだよ、この界隈の退廃ぶりは。
その辺のニュースかき集めて適当なコメントと(笑)なんか付けてる
広告貼りまくりの読みにくいblogに席巻されて、文章だけで戦ってるサイトなんかありゃしない。
オナニーに夢中で自分が気持ちよくなりたいヤツばっかりじゃないか。
みんなを気持ちよくさせたいポルノなヤツはいないのか?もうそんなヤツは残ってないのか?
俺たちが魂削って勝負したテキストサイトなんてもう死語なのか?
毎日朝まで働いて遊びでパソコンなんか見る暇ない。
でもショックなことがあって、仕事続ける自信なくなって、昔のこと思い出して、
エネルギーが欲しくてテキストサイトを探した。でもなかった。なんか涙が出てきた。
縦読みでもなんでもないチラ裏長文ですまん。しかし、書かずにいられなかった。
枕を抱えて寝るとするよ。おやすみ。

なぜ見る(笑)
そんなのマトモに読むのは、肛門に顔近づけて深呼吸するようなもんです。必ず屁を吸ってしまいますぞ!

…とまあ冗談はさておき、その気持ちは分かります。僕もテキストサイトをやっていましたが、現実世界で特にやることもなく、何かの特殊技能や自信もない僕にとっても、サイトの存在はとても大きかったものです。

最近でも、こんな記事を見かけました。

その当時、自分でもかなり情緒が不安定で、すべてがもうどうにでもなってしまえと自暴自棄になりかけていたんですが、実はぎりぎり踏みとどまれたのはこのブログがあったからです。
自分のブログがあるということ:DESIGN IT! w/LOVE

現実世界では影も形も、何の実効もない趣味のサイトが、ここまで人の心に大きな位置を占める。不思議なものです。

それにそてもこの人、いかにもネタ系の出自らしく、文章技法は今ひとつで、苦労がしのばれます。ただ、それにも関わらず、口語調の個性的な文体やグルーヴ感には、引き込まれるものがあるのも確かです。さすがに元大手サイト。

このやり場のないテキストは、僕がここで供養しておきます。

過去の栄光を持ち出したり、自信の担保を外部化したりすることなく、自分の中に確固たる評価軸を持ち、文章と意志の力で現実と戦っていけますように。この人も、僕も。

(あと、352さんはポルノなブログを始めればいいと思います。別にテキストサイトだから面白かったわけではなくて、玉石混淆の割合なんて今も昔も、それこそ個人ホームページも日記系もテキストサイトもブログも変わりません。)

(櫻木)