コラム

2年間毎日、客を減らし続ける美容院

雨の日も風の日も、チラシを配り続ける美容院が怖い、毎回避けていたらとうとう顔を覚えられてしまって毎日ツライ、という話。

僕の通勤路にも、チラシを配り続けている美容師がいる。しかも二手に分れて待ちかまえているので、通勤するにも、昼飯を食いに行くにも、かならず出くわさなくてはならないのだ。


僕はもうとっくにそこの美容院の名前も位置も知っているので、わざわざそれを受け取る理由がない。カラー印刷で紙もいいものを使っているので、もらって即捨てることになるので、無駄だ。

しかし、「美容室MYST(仮)でーすお願いしまーす!」とにこやかにチラシを出されると、それを無視して通り過ぎるのも何だか悪い気がして困る。もしも枚数ノルマ制だったら、僕がもらってあげないと彼女らは炎天下の配布作業から解放されないのではないか…。(後に時間制であることを知ったが)

そして、冒頭のブログ主さんと同様、僕もこの美容院に行ったことがあるのだ。
それなりに雰囲気もいいし、料金は控えめで、店員はにこやかで感じ良く、カットも満足のいく出来だった。

シャンプーの担当の女の子とチラシ配布について会話をした。
「あれ毎日大変そうですね」
「そうなんですよぉー! でも毎日だとウザくないですか?」
「やあ、別に気になりませんよ。頑張ってね。」

カットを終えて店を出て駅へ向かう途中、果たして先ほどのシャンプー子ちゃんがチラシを配っていた。

「美容室MYS…あ!」
「やあ、おつかれさま。サッパリしたよ」
「サッパリしましたねー!」

また来てくださいね、などとにこやかに挨拶を交わして僕らは別れた。

しかしその2日後、僕は驚くべき体験をする。

「美容室MYST(仮)でーすお願いしまーす!」
今日も配っているなあ、と思ったら、今日の歩哨はあのシャンプー子ちゃんではないか。歩いていくと、ちらっと目があったので、僕は微笑を浮かべつつ会釈をして通り過ぎようとした。

「美容室MYST(仮)でーすお願いしまーす!」

えー。普通にチラシ渡された。こりゃ常連が育たないわ。

チラシを配り続けるのは、新規顧客獲得に向けた営業努力なのだろう(チラシは、初回客だけ1000円引きになる券が付いている)。しかしそのせいで、既存客へのサービスが低下したり、フォローがおざなりになるとしたら問題だ。穴の空いた容器に小さなひしゃくで水をくみ続けているようなものだ。そんな暇があったら、まずは穴を直した方がいい。

(櫻木)