「よくできた話」という表現がある。「よくできた話だけど、どうもね…」等と、ネガティブな使われ方をすることが多い。「ご都合主義」という表現もある。
この小説は、まさによくできた話なのだ。できすぎてるかも知れない。しかし、だからといってご都合主義の、見え透いた退屈な話かというと決してそうではない。掛け値無しに面白い、そしてどれもが精緻に作り込まれたプロットの、綺麗な和菓子のような物語なのだ。
この本は、それぞれ別々に雑誌で発表された短編小説を纏めたものだ。しかし、通して読むと、世界につながりがあり、登場人物も共通している。直接の続編というわけではないが、読み終わる頃には登場人物の一人一人が、まるで知り合いの知り合いくらいの距離感を持って感じられるようになる。
大きいくくりで言えばミステリになるのだろうけど、人は死なない。探偵は出てくる。一種の群像劇のようでもあるけど、実はいろんな人物の目を通して、ある1人の男が描かれているという仕組みだ。
こんな本が620円で読めるなんて実にお買い得である。『戦場の絆』(1PLAY 500円のゲーム)はしばらく自粛する。
(櫻木)
伊坂 幸太郎は「オーデュポンの祈り」も面白いですよ。
情報thxです。チェックしておきます!