コラム

前々回、TKの偉大さについて筆を尽くして絶賛したので、「よっぽど小室哲哉が好きだったんですね」と言われたんだけど、そうでもありません。

90年代初頭に患った重度の中二病(「売れてる音楽=クソである」)の後遺症に悩む僕は、TKプロデュース作品を正面から認めることができず、ちょっと斜に構えて見ていたような気がします。

今はそんな中二病もほぼ全治したために、虚心になって「いいものはいい」と判断できるようになったというわけです。

あと、TKは実は詩人。
中二の頃は分からなかったけど、彼の詩には20代も後半以降にならないと分からないような、味わい深い歌詞が結構ある。

WOW WAR TONIGHT 〜時には起こせよムーヴメント〜

たまにはこうして肩を並べて飲んで
ほんの少しだけ立ち止まってみたいよ
純情な絵に描いたようなさんざんむなしい夜も
笑って話せる今夜はいいね…

温泉でも行こうなんていつも話してる
落ちついたら仲間で行こうなんて でも
ぜんぜん暇にならずに時代が追いかけてくる
走ることから 逃げたくなってる

流れる景色を必ず毎晩みている
家に帰ったらひたすら眠るだけだから
ほんのひとときでも自分がどれだけやったか
窓に映っている素顔を 誉めろ!

FACE (globe)

少しくらいは きっと役にはたっている
でもときどき 自分の生きがいが消えてく
泣いてたり 吠えてたり かみついたりして
そんなんばかりが 女じゃない

バス停で おしゃべりしている学生
明日の事は考えて もちろんいるけど
切実さは 比べようもない程明るい
あの人の胸には すぐ飛び込めない

鏡に映った あなたと2人
情けないようで たくましくもある
顔と顔寄せ合い なぐさめあったらそれぞれ
玄関のドアを 1人で開けよう

リーマン歌謡にOLソング。
この味わいは10代には分からないと思った。
もちろん、曲と同様、愚にも付かない詩もたくさんある。なんか若者に迎合して書いたような「甘くせつないナンチャラ」とか、恋愛を歌ったような詩は、右から左へ抜けていってしまう。

しかしこういう、「孤独」をテーマにしたときには、小室哲哉の詩はとたんに趣が変わってくる。おそらく、彼は本質的に孤独な人間なのだろう。どれだけヒット曲を飛ばしても、結婚を何度繰り返しても決して癒されることのない深い孤独、「語りつくせぬ想い」が、詩想という形でたまにその深淵を覗かせるのではあるまいか。

(櫻木)