時事問題

「日本を出て海外で働こう」と勧めるシリコンバレーのコンサルタント女史の記事が、先週話題になりました。
しかしこの主張には、日本人として到底首肯できない、いや、人としてなお看過できないものがあります。

一部引用すると…。

これまでずっとなるべく言わないようにしていたのだが、もう平たく/明快に言うことにしました。
1)日本はもう立ち直れないと思う。
だから、
2)海外で勉強してそのまま海外で働く道を真剣に考えてみて欲しい。

今の私が考える、日本の20年後ぐらいの将来はこんな感じだ。

* ベストケース:一世を風靡した時代の力は面影もなく、国内経済に活力はないが、飯うま・割と多くの人がそれなりの生活を送れ、海外からの観光客は喜んで来る(フランス型)
* ベースケース:貧富の差は激しく、一部の著しい金持ちと、未来に希望を持てない多くの貧困層に分離、金持ちは誘拐を恐れて暮らす(アルゼンチン型。あの国も19世紀終わり頃には「新たな世界の中核を担うのはアメリカかアルゼンチンか、と言われたほどだったんですけど・・・・)
* ワーストケース閉塞感と絶望と貧困に苛まされる層が増加、右傾化・極端で独りよがりな国粋主義の台頭を促す。

ワーストケースになると、日本の外にいてもとても怖い。日本は人口も多いし(20年後7000万人になってもまだイギリスより多い)、集団行動をすることにかけては世界で最も優れた民族である。なんだかんだ言って軍事力だって大いにある。大量の優秀な人たちが間違った方向で一致団結したら何が起こるか。アルカイダですらアメリカ本土攻撃できちゃうんですから。あと、怖いだけでなく、日本で生まれたものとして悲しい。なので、是非これだけは避けて欲しい。

もちろん、上述した通り、日本は貧富の差が広がりつつあるし、今後もどんどん広がると思うので、「日本で勝てる!」と思う人は、是非国内でその道を邁進してください。誘拐には気をつけてね。

あと、「日本の政治を根本から変えて日本を良くする」という自負のある人も是非日本でトライして欲しい。

(追記:あと、「逃げ切れる世代」っていう人もいますね。今の20代は無理だと思うが。)
On Off and Beyond: 海外で勉強して働こう

『勝ち・負け』って何のこと?

なんというか、ここまでステレオタイプな論考だと逆にすがすがしさすら感じますが、これがある種の人たちの中では「よくぞ言ってくれた!」ということになるんでしょうか。

私が冒頭の問いかけを一読して感じた強烈な違和感は、
「この人が言っている「勝ち・負け」、「立ち直る、立ち直れない」って、いったい何のことだ?」
というものでした。

本文を読んで見ると、何のことはない、「金を稼ぐ=勝ち」「経済大国化=立ち直り」という、堀江氏と同様の金儲け至上主義の一種でした。まあ、マッキンゼー経由でシリコンバレー在住のコンサルタント、という経歴からするとさもありなん、という気もしますが。

この人は、金さえ稼げれば世界のどこに住んでもかまわない、むしろ経済活動に最適化したライフスタイルを選択すべき(金儲けに一番都合のいい国に住めばいい)と考えているのでしょうか。

そこには、自分が育った日本という国への敬意、自分を育んでくれた両親、それに連なる祖先、連綿と受け継がれてきた文化や国土に対する想いがほとんど感じられないのです。
もしも高度な教育を受けて、アメリカで活躍するという自分の境遇には、日本人であることが全く無縁とお考えなのかも知れません。
「誘拐に気をつけて」「逃げ切れる世代もいますね」のあたりに、そのあたりの微妙な本心が見え隠れしています。

「日本はダメだ、見捨てちゃおう」のアナーキズム

もちろん、誰だって裕福な暮らしをしたいと思いますし、自分の実力を最大限に発揮して活躍したいと思う人も多いでしょう。日本だって貧困国になるより、経済大国でいてくれた方が何かとうれしいのは当たり前です。

しかし、だからといって「日本はもうダメだから、日本を捨てて海外に行こう」というのでは、あまりに反社会的なのではないでしょうか。
「この親はもうダメだから、放っておいてのたれ死にしてもらおう」
「日本は法人税が高いから、海外に会社を移転しよう」
「税金払うのもったいないから、脱税しよう」
というのと、あまり変わらないんじゃないでしょうか。

実はこの人のブログには以前にも異議を申し立てたことがあった(日本にこそノブレス・オブリージュがあった ~武士道~(1) )のですが、当時感じた違和感や反感の正体が、今回のエントリーではっきり分かりました。
「右傾化・極端で独りよがりな国粋主義」とか、「集団行動に優れた日本が暴発したら戦争になる」とか、まるで「軍靴の音が聞こえる」式の、手垢の付いたアサヒ史観。(優秀な人がこういう間違った方向に行ってしまうのは悲しいことです…。)

ただ、渡辺さんの場合は「日本を衰退させる」という間違った方向で一致団結している自覚的左翼活動家とは違い、「日本がどうなろうと構わない」という消極的なサヨク言説なので、実害が少ないのがせめてもの救いです。

日本を停滞させている真の原因は

結局は「左翼思想は人を幸せにしない」ということなのだと思います。
GHQ、コミンテルン、中共によって植え付けられた「日本悪玉史観」こそが、日本を停滞させている真の原因なのではないでしょうか。

日本は、間違った方向で団結して国家的悪事をはたらいた国。
いったい誰が、そんな「悪い国」を愛することができるでしょうか。

日本の唯一の良いところは経済大国であること。
そんなどーでもいい国に、誰が貢献しようと思うでしょうか。

もちろん、日本は悪い国ではありません。しかし、そう信じている人にとっては、それが「真実」なのです。
かくして、かつてのGHQのもくろみ通り、日本はどんどん弱体化していく。そういうことなのだと思います。

すすめ!日本

苦しいこともあるだろうさ、悲しいこともあるだろうさ、だけど僕らはくじけない。
泣くのはイヤだ、笑っちゃおう、すすめ!日本!
…といきたいものですね。

(櫻木)