時事問題

震災から一週間。書店に並ぶ週刊誌はいずれも表紙と特集は震災記事一色になっていた。

私も、今回の震災を包括的に捉え、記憶しておきたいと考え、一冊買うことにしていくつか読み比べてみた。情報の即時性ではネットが一番だが、情報の整理や保存となると、やはり雑誌が強い。

そこでまず目を引いたのが、『AERA』のこの表紙と記事。

AERA「放射能がくる」


非難囂々の『AERA』

『AERA』は、中吊りでもこのような扇情的、扇動的な見出しが目を引く。
こんな、無闇に人心を不安に陥れるようなことを書いて、何がしたいのだろうか。『AERA』は、通常時から、いつも「日本の悪い部分」を針小棒大に書き連ね、「だから日本はもう終わりだ」という論調に持って行こうとする傾向がある。今回もその基本方針に従って、扇情的な見出しで注目を集めるつもりだったのだろうが、時期を考えろと言いたい。
AERA-net.jp

さすがに批判が集中したのだろう、最初はTwitterで、続いてWeb上でこんな「お詫び」を掲載している。

読者の皆様へ
AERA今週号の表紙及び広告などに対して、ご批判、ご意見を頂いています。編集部に恐怖心を煽る意図はなく、福島第一原発の事故の深刻さを伝える意図で写真や見出しを掲載しましたが、ご不快な思いをされた方には心よりお詫び申し上げます。編集部では今回いただいたご意見を真摯に受け止め、今後とも、様々な角度から全力を挙げて震災報道を続けていく所存です。最後になりましたが、被災者、関係者の皆様には心よりお見舞い申し上げます。

(コピペされるのを嫌ったのか、わざわざ全部画像にしてあった。)

あの表紙で「恐怖心を煽る意図」以外のどんな意図があるのだろうか。

何も分かってない。多くの人々は、これを不快に感じて文句を言っているわけではない。デマに等しいような記事を大々的に載せて人々の不安を煽り、それで雑誌の部数を伸ばそうとする、つまり国民の不幸で金儲けをしようという手法に対して怒っているのだ。

ピント外れの『週刊現代』

『週刊現代』は、写真を多く使って震災の現地の様子を生々しく伝えようとしたのは分かるが、これも「全国民必読!これから始まる本当の恐怖」など、恐怖を煽って雑誌を売ろうとする姿勢がやや鼻につく。

これから始まる「本当の恐怖」

見開きで大きな遺体写真を掲載するのも賛否が分かれるところだろうが、私が一番気になったのは、瓦礫の中に埋まっている昭和天皇と香淳皇后の御真影を写した写真。おそらく戦中派のお年寄りの部屋に長年飾られていたのだろう。それに対するキャプションが「昭和天皇のポートレイト」。ポートレイトって…。
【雑誌ネット】週刊現代 最新号

週刊ポストが素晴しい

今回、一番素晴しかったのは『週刊ポスト』だろう。各誌が軒並み、震災の悲惨さや恐ろしさを伝えるところで止まっているのに対して、週刊ポストだけは復興に向けたポジティブな記事を沢山掲載していた。
【雑誌ネット】週刊ポスト 最新号

週刊ポスト

何しろ、この表紙からして素晴しい。
救出した赤子を抱いて笑顔の自衛官の写真に、特大の文字で「」である。力強く、美しい。
また、特集の前には、丸々2ページの見開きでこんな文章が載っている。

日本を信じよう(クリックで拡大)

幾度となく焦土から立ち上がった私たちは、再び力強く甦る。
日本を信じよう。

特集の内容も、李登輝元総統をはじめとする著名人達の、復興に向けたオピニオン記事「いま私たちは何を考えどう行動すべきか」にも励まされた。

人々はもう悲劇を消費させようとするメディアには飽き飽きしている。今必要なのは、これから何が出来るか、明日をどうすればいいのか、デマではない信じるべき情報は何か、そういう有益な記事なのだ。
そういう意味でも、今週の週刊ポストのポジティブな内容は素晴しかった。少なからぬ日本人が励まされたことと思う。

週アス、少年ジャンプもファインプレー

また、普段は女性タレントのグラビアを表紙にしている週刊アスキーが、

まず、3月22日発売号の週刊アスキーの表紙ですが、いつもの週アスの表紙を心待ちにしていただいていた皆様には本当に申し訳なく思います。震災後に伝えられる映像やネットの情報を見るにつけ、表紙に入れるべき文章もビジュアルも、正直、何も思いつきませんでした。そのため、今回のような表紙になってしまったことをお詫び致します。

週刊アスキー読者の皆様へ

と白い表紙で出版し、かつ被災地の物流が回復していないから、といううことで全記事ページをPDF化して無償公開している。福岡編集長の英断に拍手を送りたい。

週刊少年ジャンプも、配送の遅れた15号を全話分無料電子配布することを発表した。
「週刊少年ジャンプ 15号(3/14発売)」 全マンガ作品無料配信のお知らせ

災害が露わにしたメディアの本音

震災をネタに金儲けをしようとする雑誌、金儲けよりも読者のことを考える雑誌、復興に向けた提言をする雑誌…。
大震災という非常事態は、メディアの本音、品格の差をも浮き彫りにした。

(櫻木)