コラム

残酷無比かつ今までのマンガの常識を超える迫力ある描写で、時代劇漫画というジャンルに新境地を切り開いた『シグルイ』。その解説本である『シグルイ 奥義秘伝書』 を読んだ。

中身はよくある人気漫画のガイドブック的な、「登場人物が背景世界を説明する」というような内容を越えるものではなく、正直言って値段分の価値は全くない。データにしても「最も多く人を斬ったのは?」とかページ稼ぎとしか思えないようなどうでもいいものばかり。原作を普通に読み込んでいる読者虎子なら、わかりきったようなことしか書かれていない。登場人物が吹きだしで説明する演出も「シグルイ」らしくない。何のために作者の山口貴由先生が「あえて『シグルイ』ではセリフを極力短くしてあります。」と語っているのか、編集者はもっとよく考えるべきである。

と言うわけで買う価値なし、と断じたいのだが、時折入る山口先生自身による解説はとても面白い。

「剣の才能っていうといろいろ考えてしまうけど、単純な身体能力を考えるのなら、やはり牛股は虎眼流の中でも特に天才と言えるでしょうね。」

「藤木には、相手の心境を理解できないところがあります。鈴乃介から憧れのまなざしで見られても、藤木には伝わらない」

中でも一番衝撃を受けた説明はこれ。

「虎眼のモデルは原作者の南條先生です。」

えぇーーーっ!?

また、巻末には山口先生への独占インタビュー記事もあり。初っ端から

――例えば、吉川英治先生の『宮本武蔵』などの小説を漫画化しようとは思わなかったのでしょうか?

などの異様に挑発的な質問で始まるのも凄い。
連載誌の『チャンピオンRED』誌上に掲載されて大きな反響を呼んだ、読者からの質問に答える一問一答が完全収録されているのもアツい。

Q.漫画家以外でなりたい職業は何ですか?

「ないですね。考えたこともない。」

Q.女性の好みはかわいい系?それとも美人系ですか?

「若者達にいいたいです。こういう質問に答えて自分の値打ちが上がることは絶対にないッ! こういう罠に引っかかるな。」

Q.血液型は何ですか?

「A型です。くだらないですね。」

Q.殴り合いのケンカをしたことがありますか?

「ありますね。3回くらい。ものすごい速さで勝ちますね。相手もすごい弱い奴なんで。でもこれ、何か自慢ぽいですね。」

Q.マンガを描くときに、こだわっていることは?

「主役のヒーローがカッコいいこといったりやったりするじゃないですか。それを書くとき、『それを自分はできるのか』って一回自身に突きつける。「お前、何描いてんのか分かってるんだろうな」って。そこですかね。」

こんな名調子が百問百答! くだらない質問に対しては本当に手厳しい山口先生であった。作品についての質問の中で僕が一番「ああ、なるほどなぁ」と思ったのは「シグルイの中で、一番自分に近いキャラは誰ですか?」という質問でした。

4253232477

(櫻木)