パチンコ

以前取り上げた『パチンコ おぼっちゃまくん』のその後だが、実は前号のSAPIOでまるまる1回分使って反論というかフォローがされていた。しかしこれは…。うーん…。

「おぼっちゃまくんがパチンコになったって本当ですか?」
「小林よしのりは北朝鮮に魂を売ったってネットで非難の嵐ですよ」

編集部に電話があった。ネットなんか無視してろと言いたいが…
パチンコの収益が北朝鮮に流れていると言う噂は聞いたことがある。

いまやパチンコ業界への偏見は左右関係なく『純粋まっすぐくん』に蔓延しているようだ
第一におぼっちゃまくんのパチンコメーカー京楽は日本企業であって朝鮮系ではない!
そもそも北朝鮮への送金問題は、日本政府が帰省するか、禁止すればいい話であって、わしはそれに賛成する!

いまさら言うのもあほらしいが、わしはプロである!
『金儲け抜き』でマンガを描くことは絶対にない!
そんな作品を商業誌が載せるわけがない!

どうやらわしが『商売抜き』で運動かボランティアでマンガを描いていると思っている馬鹿が、ネット方面に入るらしい。
ネット右翼は、商売を汚いことだとみなす社会主義的な体質がある。『純粋まっすぐくん』なのだ!
バカボンもキン肉マンもガキでかも北斗の拳もパチンコになっているのに、『おぼっちゃまくん』だけはいかんと抜かす奴がいる。
(略)
パチンコにしろ、酒・タバコにしろ、漫画にしろ、不健全な側面を抱え込む文化だ。
わしは人間の『業』を認める立場なので、純粋主義的な主張にこそ、ナチスや紅衛兵に通じる不気味さを感じる。
今のパチンコは昔とは全く違って、ゲーム機のようになってるらしく、女性客も多いと言うから、漫画が文科省に認知されるまでに毒が消え、堕落したように、パチンコも健全な娯楽に変化していく過程なのだろう。
わしは金を払ってでも読むと言う読者しか信じないし、金を払ってでも読ませる作品を作りたい!
それがプロの評価だからだ。凄い作品を作っていると言う証明だからだ!
身を持ち崩すような毒もパチンコにはあるのかもしれんが、それこそ自己責任だ。
漫画読んでも、小説読んでも、影響されて事件起こす奴はいる。
そのくらい毒のある作品しかわしは書いてこなかった。
酒も、タバコも、パチンコも、人の迷惑になる危険はあるが、だからそれらを排除しろという奴らは、全体主義者である!北朝鮮に行け!
酒もタバコもパチンコも、この世から人間の『業を抱え込む快楽』をすべて無くせと言う純粋主義に、わしは決してくみしない!

それは全体主義に直結する危険なイデオロギーである!
漫画家は大ヒットの連発でしか生き残ってゆけない。パチンコひとつでがたがた行ってるような匿名のカスなど眼中にない!

うーん…。

そもそもおぼっちゃまくんがパチンコになったことを嘆いている人たちは、果たして本当にこんな荒唐無稽な主張をしている人たちなのだろうか。

  • キン肉マンや北斗の拳はいいがおぼっちゃまくんはダメ
  • パチンコも酒もタバコもこの世から全てなくせ
  • 金儲けは汚い。ゴー宣はボランティアで描け

無茶苦茶である。いったい氏は誰と戦っているのか? 氏の考える「ネット右翼」と言う存在しない敵ではなくて、今戦うべきは追い詰められて日本に核の牙をむこうとしている北朝鮮なのではないか。

しかもこの反論は、途中で論点がすり替わってしまっている。文章で要旨を読むとわかりやすいが、今回小林よしのり氏が批判を受けているのは、金儲け主義ということではなくて、コンテンツをパチンコ事業に使わせたことに対して、だろう。

作品が、人々に評価されて売れないと成り立たないのは当然だ。ゴー宣も、マンガという手法をとって広く言論を普及していくために、エンターテイメントとして受け入れられる必要がある。私も素晴らしい作品には惜しみなく金と敬意を払う。

要するに、本業でいくら儲けてもいいけど、パチンコ等という利敵産業から黒い金を受け取らないで欲しい、と言っているのだ。

パチンコは、酒やマンガのような娯楽や嗜好品ではなく、明らかな社会悪である。戦後の朝鮮人の争乱とGHQの妥協、そして警察の諦めと利権の癒着によって、法律で取り締まられなくなってしまった社会悪だ。パチンコの賭博性や、北朝鮮への送金を警察や政府が取り締まれるようだったら、とっくにしている。それができないところに現代日本社会の歪みと問題が象徴されているのではないか。

それに、よしんば機器の製造メーカーが日本企業だったとしても、そのパチンコ機器を設置するのは全国津々浦々、駅前にあるそれぞれのパチンコ屋である。戦後の混乱と出征兵士の未帰国に乗じて父祖の土地を奪い、今なお日本人から多額の金を収奪しているパチンコ屋なのだ。

ただ、だからといって「小林よしのりには失望したっ!」「ボイコット!」「もう二度と読まない!」「ぜっこーもん!」と騒ぎ立てるつもりもない。

今でも、『戦争論』『攘夷論』『天皇論(この間出た新刊)』は、全日本人が読むべき傑作だと思っている。しかしパチンコはいかんし、この反論もいただけない。
まあ自分の頭で考えて、その時のテーマや作品によって、是々非々で判断していくしかないということでしょうね。当たり前の話ですが、作品はその作者の人格ではなく、その作品個々の出来で判断されるべきなわけで。

(櫻木)