時事問題

先週、田母神前幕僚長が会長を務める保守系ネットワーク『頑張れ日本!!全国行動委員会』が実施する大規模なデモが行なわれた。
デモは、尖閣諸島に対する中共の侵略行為と、日本政府の弱腰対応を批判するもので、主催者発表によると2600名を超える大規模なものだった。
代々木公園で始まったデモは、その後渋谷の繁華街まで行進をし、ハチ公前交差点も日の丸の旗で埋め尽くされた。

しかし、この「事件」を報道した日本のメディアは皆無だった。

この事件を私達が知ることができるのは、海外ニュースを逆輸入という形で見られるからである。

デモ隊は中国の侵略行為を批判しながら渋谷を練り歩いた

デモ隊は中国の侵略行為を批判しながら渋谷を練り歩いた(CNN)

(CNN) — Anti-China protesters gathered Saturday in Tokyo and six other major cities in Japan to rally against what it calls an invasion of disputed islands that both claim are part of their territories.

Protesters held up Japanese flags and chanted, “We will not allow Communist China to invade our territory.”

China accused of invading disputed islands – CNN.com

【10月2日 AFP】(写真追加)東京・代々木公園で2日、尖閣諸島(Senkaku Islands、中国名:釣魚島)沖での中国漁船衝突事件に端を発した一連の政府の動きを「外交の敗北」などと批判する右派系団体が集会を開いた。主催者発表によると、約1500人が参加した。

元空幕長らの団体が代々木で集会、中国対応で民主党政権を批判 写真10枚 国際ニュース : AFPBB News



尖閣諸島を巡っては、漁師に扮した中共の工作員が逮捕・釈放され、緊張と混乱が高まっている情勢下にあり、物言わぬ民衆と思われている日本側のデモと言うことで、ニュースバリューはあるだろう。海外メディアもそう考えてちゃんと取材をし、ニュースにした。

ところが日本のメディアは、例えば中共側が100人単位のデモをすれば大々的に報じるくせに、日本でその26倍規模のデモが行なわれても、完全にスルーしてしまうのだ。

例1

香港で100人がデモ 賠償と謝罪を求める

< 2010年9月27日 12:08 >

沖縄・尖閣諸島沖の漁船衝突事件を受け、香港で26日、約100人が集まり、日本領事館前までデモ行進を行った。デモ隊は「日本の軍国主義を打倒しろ!」などと叫びながら、日本政府に対して中国への賠償と謝罪を求め、日本の自衛隊の艦船が掲げる旭日旗(きょくじつき)を燃やした。

香港で100人がデモ 賠償と謝罪を求める | 日テレNEWS24

例2
香港:200人が抗議デモ…日本製品不買訴え 漁船衝突で – 毎日jp(毎日新聞)

「報道の自由」という言葉があるが、これはメディアの「報道しない自由」とでもいうべきだろうか。いずれにせよ、日本国民の「知る権利」は著しく侵害されていると言うべきであろう。

この事件は、日本は、戦前・戦中とちっとも代わらぬ、言論統制国家である、ということを浮き彫りにして見せた。

産経新聞の阿比留記者は、自信のブログのコメント欄で「報道統制か?」と問われてこのように答えている。

デモについては、私は取材していないので申し訳ありませんが、報じたかどうかその間の事情はよく分かりません。ただ、
>報道統制でしょうか?
…こういうことはありえません。この日本で、誰が、どうやって、そんなことができるか想像もつきません。

Commented by 阿比留瑠比 さん
「靖国参拝」という有効な対中カードを振り返る:イザ!

政府から「中国に都合の悪い報道はしないように」とお達しがあったわけではあるまい。さすがに現代はそこまで露骨な強権発動はできないだろう。
では報道規制はなかったか。いや、それでもあったと考えるのが妥当だろう。
それを指示したものは、「空気」である。

  • 日本の「右翼」のデモなんか報道して、右翼新聞だと思われたら困る
  • せっかく船長釈放したのに、また中国を刺激したらあとあとまずいかもしれない

そのように考えたメディア側が、誰に言われるでもなく、勝手に情報を自主規制したのではないか。
これは、政府がメディアを弾圧して報道を規制するよりも、よほど恐ろしいことである。

政府が相手なら反政府運動もできるが、空気には実体がない。

戦前も、朝日新聞を筆頭とする大メディアが、戦意発揚、戦争誘導の報道をしまくり、国民世論と政府運営は、それに引きずられていった。
そして今またメディアは、横並びに「自主報道規制」を強めているかに見える。

ただ、かつての時代と違うのは、現代の私達には、ネットと情報リテラシーが与えられているという点である。何が真実か、何が真実でないか、常に見極めながら日本を守っていかなくてはならない。

(櫻木)