時事問題

先日、首相の礼状の「御心ずかい」について、「昔の広辞苑では『こころずかい』となっている」という話を紹介しましたが、これは誤解に基づく主張でした。検証不足で誤認識を広める結果となってしまったことをお詫びすると共に、本稿で訂正いたします。

表音見出しとは

広辞苑ではいわゆる「表音見出し」というものが採用されており、仮名遣いを知らなくても引けるように、発音通りの見出しで表記されているのでした。

かなづかい 表音式かなづかいに従って太字で表記した。和語・漢語には平仮名を、外来語には片仮名を用いた。

1 ここにいう表音式かなづかいは、いわゆる現代かなづかいとほぼ一致する。

ただし、二語の連合または同音の連呼によって生ずる「ぢ」または「づ」については、これをすべて「じ」または「ず」で表わし、また、助詞の「は」「へ」「を」はそれぞれ発音通りに「わ」「え」「お」で示した。この場合、右に該当する仮名の下には< >でかこんで現代かなづかいを注記した。

(『広辞苑』第2版補訂版 凡例p.7)
「御心ずかい」の件: 昔の『広辞苑』の見出しの表記方針はいまと違う – 安眠アダージェット

ネットの過失

メディアへの不信感が前提にあり、麻生総理擁護をしたいところで「広辞苑の切り抜き画像」に「こころずかい」という文字があったために、一斉にそれを信じてしまった。
ある資料を前後の文脈や凡例を無視して部分だけ抜き出すことによって、恣意的な資料になってしまうという、マスメディアが意図的に使用する現代のサンプリング文化の落とし穴に、自らがはまってしまったというところか。

朱雀式の間違い

ネット上の断片的な資料を見て、すぐにそれを引用してしまった。自分で辞書をひく習慣があれば…ということでもなく、「自分が見たいものしか見ようとしない」習性にどれだけ抗って知的誠実性を確保できるかが課題である。

メディアの過ち

そもそも首相にもらった直筆の礼状を公開しつつ、放送上で間違いをあげつらうという非礼は、例え誤字があったとしても帳消しになるものではない。

先日の文章の主題もここにあるので、誤字問題についてはここに訂正いたしますが、先日の文章全体の修正や削除はしません。

礼状を公開した上に嘲笑するという非礼

このニュースでまず驚いたのが、一国の首相がわざわざマスゴミの女性記者風情に、ホワイトデーのお礼などというどうでもいいことを、肉筆(コピーかも知れませんが)の礼状としてしたためて個別に送った、という丁重さです。なんというジェントルメン!

それに対してこのマスゴミアナの取った行動はなんですか、「誤字発見! 晒してネタにすべぇ!」なんというゴミっぷり。
百二十歩譲って誤字があったとしても、こりゃないわ。
朱雀式

…百二十歩を百歩に訂正しておきます。

戦後国語教育の誤り

そもそもこのやうな混亂が生じてしまふのは、戰後にそれまでの日本語文法の正統性や連續性を一切無視して、一部の學者による「合理性」の判斷に從つて强制的に制定された「現代假名遣ひ」のせゐである!
現在の辭書は、「表音假名遣ひ」「現代假名遣ひ」「正假名遣ひ」の三つに配慮しなくてはならず、編著者も讀者も混亂して收拾が付かなくなつてゐる。國語表記が、正假名遣ひのまゝであれば、このやうな無用な混亂は生じなかつたはずなのだ!

…というわけで、先日 鬼の首を取ったように

(メディアでは)まあこの一件の真相やお詫びもろくに放送されないんでしょうけど。

と言い放った手前非常にお恥ずかしい限りですが、以上、朱雀式の真相とお詫びです。お騒がせしてすみませんでした。

・参照リンク
「御心ずかい」の件のまとめ – 科學の剃髮

本當は「正しい日本語」が現在は存在しない、よつて「心ずかい」を「正しくない」と言ふ事が出來ないだけなんだが。
しかし広辞苑広辞苑つて日本は広辞苑村か。
闇黒日記 平成二十一年三月十五日

(櫻木)