時事問題

先日、日本の首相経験者を集めて、胡錦濤を囲む会がホテルニューオータニで開かれた。日本側の出席者は中曽根康弘、海部俊樹、森喜朗、安倍晋三の四氏。中曽根大勲位を始め、どいつもこいつも中共に弱みでも握られたか、馬鹿の一つ覚えのように「日中友好(笑)」を繰り返し、みっともないったらない。

かつて、中韓に対する毅然とした姿勢を高く評価された安倍氏までこんな会合にのこのこ参加している。まあ、あの辞任劇以来、すっかり表舞台からいなくなってしまったし、失地回復のために少しでも人前に出たいのだろうか…。と、いささか残念な思いでこの報道を見ていたが、安倍さんはやはり、安倍さんだった。

こうした会場の「緩い空気」(出席者)が一変したのは、続いて安倍氏がこう発言してからだ。

 「お互い国が違うので、利益がぶつかることもあるが、戦略的互恵関係の構築に向け、相互訪問を途絶えさせない関係をつくっていくことが重要だ」

 これは、小泉氏の靖国参拝をめぐり中国側が首脳交流を途絶えさせたことを暗に批判したものだった。安倍氏はその上で、「チベットの人権状況を憂慮している。五輪開催によって、チベットの人権状況がよくなるのだという結果を生み出さなければならない」と指摘した。

 会場には緊張感が走り、出席者はみな一様に黙り込んだが、安倍氏はさらにウイグル問題にも言及した。東大に留学中の平成10年の一時帰国中、国家分裂を扇動したとして中国に逮捕されたトフティ・テュニヤズさんについて「彼の奥さん、家族は日本にいる。無事釈放されることを希望する」と求めたのだ。

 「私はその件は知らないので、正しい法執行が行われているか調べる」

 胡主席は、こう返答したが、チベット問題については触れようとしなかった。
「「無事釈放を…」安倍前首相発言で緊張走る 」政治も‐政局ニュース:イザ!

この発言を評して、「また安倍のKY(空気読めない)発言だ」等と揶揄する向きもあるようだが、とんでもない。確かにその場の「悪しき空気」を読まなかったかもしれないが、胡錦濤に対するこうした発言をこそ大多数の国民は望んでいるのではないか。
これに対して、空気を読んでいる森元総理のこの発言の格好悪さを見よ。

安倍氏の発言で生じた気まずい雰囲気を修復しようと動いたのが森氏だった。北京五輪について「中国はメダルをたくさん取る作戦でくるのでしょうね」と水を向け、胡主席の笑顔を引き出した。

ま、確かに「場の雰囲気」は和んだのかもしれないが、こんな空気読みはどうでもいい。森氏は場の空気しか読めないが、安倍氏は国民の空気を読んだのだろう。

しかし、さらに空気を読めている人がいた。

小泉純一郎元首相は「おれが行ったら、胡主席は来ないんじゃないか」と周囲に漏らしており、姿を見せなかった。

招待されながら堂々のボイコット。というかサボタージュ。この人は本当に空気を読むのが天才的に上手い。

しかし、この日の「ミスター空気」の称号は、どのニュースにも全く発言内容が取り上げられていない、文字通り空気と化した海部元首相に捧げたい。

(櫻木)