歴史と日本

「天皇は、何のために存在しているのか」
「天皇は、なぜ特別なのか」

皆さんは、誰かにこう聞かれて即答できますか。

ネット上でも、ゆとり世代やネットサヨクによって、「天皇なんていらないんじゃない?」というような不敬きわまりない言辞を目にすることがありますが、彼らはおそらく何も知らないのでしょう。
「世界三大権威だから」という説も見かけますが、そもそもなぜ権威なのか。権威だから尊いのではなくて、尊いから権威があるはずですよね。ではなぜ天皇は特別で、尊いのでしょうか。


天皇が特別なのは、皇統をさかのぼると神話の時代までたどり着くからです。日本の神話にあるいわゆる『天孫降臨』、つまり天界から使わされた神の子孫が神武天皇であり、それから2700年近くも、連綿と絶えることなく続いている聖なる血統。これが特別でないわけがありません。

天孫降臨よりも更にさかのぼれば、この国を生んだのはイザナギ・イザナミの二神。最初の男女です。その子が天照大神、その子孫のニニギノミコトが地上に下り、その子孫が天皇となりました。つまり、全日本人の先祖のルーツをたどっていくと、どこかで皇室に行き当たるかもしれないということになります。
つまり、神話をベースにして考えれば、我々もみな神々の末裔であり、その直系の子孫が天皇です。
ということは、例えば日本人全体を家族として見なせば、天皇は親にあたるわけですから、「天皇は必要なのか」等という問いは「親なんて必要なのか」という質問と同じで、何の意味もないということが分かります。
我々が必要としたから親がいるのではなく、親がいるから我々がいます。しかし逆に親もまた子がなければその人が「親」ではないのと同様、天皇あってこその民、民あってこその天皇、でもあります。

究極の祈り

天皇は、太古の昔から祭祀を司り、祖神を敬い、五穀豊穣と民の安寧を祈り続けてきました。
畏くも今上陛下に於かせられても、災害や社会不安に際して、実に細やかにお気遣いをくださいます。

こちらは、先だっての御即位20年の玉音会見においての御言葉です。

国内のことでまず思い起こされるのは、6400人以上の人々が亡くなった阪神・淡路大震災です。地震による家屋の崩壊とともに火災が起こり、誠に痛ましい状況でした。ただ淡路島では、火災がすべて未然に防がれ、また、地域の人々による迅速な救出活動により、多くの人の命が助けられたと聞きました。この地震は、その後に大きな教訓を残しました。建築の耐震化が進められ、人々の間に、災害に対する協力の輪が広がりました。後に他の被災地を訪れた時、自分たちの災害に支援の手を差し伸べてもらったので、お礼の気持ちでこの被災地の支援に来たという人々に会うことがあり、頼もしく思いました。

苦労の多い中で、農業、林業、水産業などに携わる人々が様々に工夫を凝らし、その分野を守り続けてきている努力を尊いものに思っており、毎年農林水産祭天皇杯受賞者にお会いするのを楽しみにしています。

今日、日本では高齢化が進み、厳しい経済情勢とあいまって、人々の暮らしが深く案じられます。そのような中で、高齢者や介護を必要とする人々のことを心に掛け、支えていこうという人々が多くなってきているように感じられ、心強く思っています。皆が支え合う社会が築かれていくことを願っています。

平成が20年となり、多くの人々がお祝いの気持ちを表してくれることをうれしく思い、感謝しています。
この機会に、我が国の安寧を願い、国民の健康と幸せを祈ります。
NIKKEI NET(日経ネット):天皇・皇后両陛下の即位20年会見 全文

私は、世の中で天皇陛下の御言葉ほど純粋な言葉を聞いたことがありません。そこには一切の打算も私心もなく、まさに穢れのない究極の祈りです。
例えば、政治家でも総理大臣でも、災害があれば現地を視察したり、会見で気遣ったりはするでしょう。しかし、そこには多かれ少なかれ、私情が発生してしまう。たとえ意識がなかったとしても、政治家の言動は得票や支持率に影響してしまう。政治家は政治を行うことは出来るが、祈ることは出来ない。

ところが、天皇には支持率も収入もありません。天皇の行動(祈り)は、全て民を思う大御心からの発露です。天皇の「仕事」は、皇祖への感謝を捧げ、民の暮らしの安寧と国の未来を祈ることだからです。存在意義といってもいいでしょう。それはあたかも親が子を思うがごとく、です。以前、靖國神社の話の時にも書きましたが、人は誰かのために無私の行動をとるとき、神に近づきます。天皇の場合は、365日24時間がこの状態です。これが尊くないわけがありません。

このように、天皇は日本人のルーツと精神の中心軸に位置する「機関のようなもの」です。これが占領憲法でもうたわれている「象徴」の意味であって、これを欠いたら日本は日本でなくなります。天皇の祈り(祭祀)を中心とした、歴史(神話)と精神と言語とを共有する人々の集まり、これが日本の国体なのです。

日本は戦後、戦時中の教育を否定するあまり、全てを無くし、全てを破壊してしまいました(あるいはGHQに破壊された)が、こうした日本そのものに関する基本的な事柄は、小学校教育でちゃんと教えるべきでしょう。

(櫻木)